物ばかりのブログ

読んだ本などの淡々とした記録

障害者による犯罪を追ったルポタージュ「累犯障害者」


累犯障害者

人類における知的障害者出生率は、全体のニ%から三%といわれている。だが四十五万九一〇〇〇人だと、我が国総人口の〇.三六%にしかならない。〔略〕「日本人には知的障害者が生まれにくい」という医学的データは、どこにもない。要するに四十五万九一〇〇〇人というのは、障害者手帳所持者の数なのである。現在、なんとか福祉行政とぬながっている人たちの数に過ぎない。
犯罪被害者となる障害者ではなく、犯罪者となり刑務所に入る障害者に焦点をあて、現在の福祉行政の穴を浮き彫りにする。自らも服役経験のある著者によるルポタージュ。

驚いたことに、ろうあ者間で用いられる手話は、一般的に聴者が学び用いるものとは全く異なっているのだそうだ。なぜなら聴者が作り上げた手話には口語や五十音を前提とした聴者の合理性があるばかりで、生まれながらに耳が聞こえない人にとってそれは必ずしも合理的ではないから。日常的に使う言葉の構造が違うのだから、同じ日本という国にいながら見えている世界も全く異なっている。同じ1人の人を聴者とろうあ者が描写するとき、前者は「あの人は大人しく地味な人」と表し、後者は「あの人はおてんばで派手な人」と表する、そんなことも実際にあるのだそうだ。

障害者であろうがなかろうが被害者がいる以上、犯罪を犯した者は裁かれるべきと思う一方で、刑務所の中を安息の地と思う人、出所後に何度も犯罪を繰り返し、望んで刑務所に戻ってくる人、あるいは出所後の生活に苦悩し自殺を選ぶような人がいる現状にはやはり問題があると思う。